シンガポール営業所開設

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成長著しいASEANに、初の重要拠点。海外展開の鍵を握る、シンガポール営業所開設。

成長著しいASEANに、初の重要拠点。海外展開の鍵を握る、シンガポール営業所開設。

ニューヨークに続く海外拠点として、帝国ホテル「シンガポール営業所」が開設されたのは2014年10月1日のことだった。
円安の継続や世界遺産登録をはじめとする観光資源の充実化などが追い風となり、2014年には1300万人を超えた訪日外国人数だったが、特に東南アジアからのゲストはビザ発給要件の免除・緩和措置などによって年々増加傾向にあるという。
政府は、東京オリンピックが開催される2020年に訪日外国人数2000万人達成を目標に掲げている。帝国ホテルではアジア地区からの宿泊売上について、東京・大阪をあわせて2020年度までに2013年度比40%増を目指す。
シンガポール営業所の開設を機に、経済発展著しいASEANマーケットに軸足を置き、ビジネス客や観光客、国際会議などを取り込みたい考えだ。

現地法人立ち上げに奔走した営業部 石川。初代所長としてシンガポールに赴任した関戸。そして、新マーケットに向けて広告・広報を展開した伊藤。3人が挑んだ仕事の裏側に迫る。

経験したことのない、海外法人立ち上げ。そこにあったのは、攻めの姿勢。

経験したことのない、海外法人立ち上げ。そこにあったのは、攻めの姿勢。

左から 石川(営業部販売企画課)、伊藤(ホテル事業統括部広報課) 左から
石川(営業部販売企画課)
伊藤(ホテル事業統括部広報課)

シンガポール営業所の開設からちょうど1年前の2013年10月。営業部販売企画課で支配人を務める石川のもとに、ある指令が下った。「営業部でアジアの拠点づくりに向けた調査を開始せよ」というものだった。石川は語る。「正直、驚きました。サービスや商品を販売する営業部に在籍している私自身、拠点づくりのノウハウは持っていませんでした」。金融をはじめとした経済の中心地であること。各国のヘッドクォーターオフィスが集積していること。候補にあがったひとつがシンガポール。営業部の中にはアジアマーケットを担当するチームがあるため、現地に出張を重ねる彼らからの情報を得ながら、市場調査はまさに手探りでスタートした。
「かつて海外拠点としてロサンゼルスやロンドンに営業所を持っていた時期もありましたが、立ち上げを経験した社員はもういませんでしたので、本当に『初体験』の連続でした。ただ、このプロジェクトはいわば帝国ホテルの『攻め』の一手になるわけですから、身震いしましたね」。あらゆる角度から検証し、候補地をシンガポールに絞った石川ら。現地の法律と照らし合わせ、法人を立ち上げることを決意。「ひとつの企業をつくる。しかも海外につくるということです。こんな経験は、帝国ホテルで働いていても滅多に巡り会えません。通常の販売企画業務と並行しての業務でしたので、実際には大変でしたが、実に濃密な1年間だったと思います」。仮の所在地を押さえ、登記をし、現地の責任者として任せられる人材の選定を進めていった。

「帝国ホテル」ブランドが通用しない地で、走り回る、たったひとりの責任者。

「帝国ホテル」ブランドが通用しない地で、走り回る、たったひとりの責任者。

関戸(IMPERIAL HOTEL ASIA PTE. LTD.) 関戸(IMPERIAL HOTEL ASIA PTE. LTD.)

初代所長の特命を受けたのは1998年入社の関戸だった。それまで、営業部アジアマーケット支配人として、特に東南アジアに出張する機会が多かったことが、人選理由のひとつだった。「自分の営業スタイルは、ウェットな人間関係も重視されるアジアマーケットに向いていた気がします」と関戸。開設直前の9月になると石川は先行してシンガポールに渡り、オフィスの賃貸契約や社宅探しに奔走した。「約1ヶ月滞在する中で諸手続きを重ね、ようやくオープンの10月1日を迎えた感じです。毎日忙しく、打ち上げをする余裕もありませんでした」。
出張ではなく、現地に拠点を持って営業活動をするということ。それはつまり、これまでとは違う濃さ、深さの情報収集が期待されるということだ。また、短期的な目標はもちろんのこと、5年後10年後に向けた「帝国ホテルブランド」浸透のための種を蒔くということでもある。「ありがたいことに、日本では帝国ホテルという名前は広く知られていますし、イメージもしっかり伝わっています。けれど、アジア全土ではそれは通用しない。日系企業、現地企業、旅行関連企業、政府関係、そしてメディアなどあらゆるところを回り続けているところです。企業のトップと面会できるまでのプロセスが短いと、手応えも強いです」。知名度はまだ十分ではない。だが、だからこそ「伸びしろが大きい」と関戸は言う。「さらに言うと、日本人が当たり前に提供しているサービスは、ハード面でもソフト面でも非常にレベルが高いんです。帝国ホテルのおもてなしは、海外でも大きな魅力になるはずです」。アジアのハブというポジションであるシンガポールには欧米からのビジネスパートナーも集まっている。また、アクティブな日本人起業家も多いという。刺激的な環境の中で、関戸はまさに「現地でしかできない仕事」に邁進している。

発想を変え、手法を変えた広告戦略。「帝国ホテルらしさ」を守りながら、手を加えながら。

発想を変え、手法を変えた広告戦略。「帝国ホテルらしさ」を守りながら、手を加えながら。

そんな現地での奮闘を日本から後方支援してきた1人が伊藤だ。広報課でおもに海外向けのPRを担当している。広報課は、プロジェクト発足当初からさまざまな施策を企画してきた。「帝国ホテルの知名度がまだ十分に浸透していないエリアでしたので、国内での活動とは異なる手法にも挑戦しました。実際に現地で活動する関戸と電話やメールで連絡を取り、要望に沿った形にもなるよう心がけました」。帝国ホテルの魅力とは何か。外国人が日本のホテルに期待しているサービスとは何か。社内で働く外国人スタッフにヒアリングすることもあった。また、旅行でシンガポールを訪れ、現地の人々のホテルライフを垣間見たこともひとつのヒントになったという。「型通りでは見えて来ないこともあると思います。現地の、評価の高いホテルに泊まってみて、『帝国ホテルのサービスも胸を張って伝えられる』と改めて実感できたことも収穫でした」。
今回、広告活動でトライしたのは大きく2つ。ひとつは、広告ビジュアルを刷新し、新たに2種類つくったこと。もうひとつは、初めての試みとして海外向けのテレビCMを制作したことだ。「シンガポールという市場で私たちがターゲットにしたのは、ビジネスマンと富裕層のレジャー客でした。ニーズや目的が異なるどちらにも『日本で、帝国ホテルのサービスを体験したい』と思っていただける広告になるよう、写真や映像に映る細かい部分にまで気を配りながら制作しました。CMは地上波で流したものをWEBにも展開するなど、デジタルメディアの有効活用も念頭に入れています」。(ページ下部のバナーよりご覧になれます。)
広報課としてひとつのピークに定めたのは、社長がシンガポール営業所を訪問するタイミングだった。その日の現地朝刊には、堂々たる帝国ホテルのロビーの写真に「Singapore Office Now Open」のコピーが踊った。「社長の定保と所長の関戸らで現地の法人にあいさつ回りをしたのですが、当日の朝刊を大量に買って、それを渡して歩いたそうです。長い時間をかけて練った紙面がシンガポールの街にどう受け止められるか、東京のオフィスでドキドキしていましたね」。単身、異国の地に乗り込んだ関戸をサポートするために、どんなアイデアが必要なのか。悩みは尽きない。「当社は何と言ってもサービス、つまりは『人』が一番の強みです。今後は、アジアだけではなく全世界に向けて、さらに『人』の魅力を訴求していければと思っています」。

初体験の連続だったプロジェクト。それぞれに宿った、未来への意志。

初体験の連続だったプロジェクト。それぞれに宿った、未来への意志。

ホテルというサービス業の代名詞のような職場にいながら、ビジネスのダイナミズムを体感した3名。シンガポール営業所立ち上げプロジェクトは、彼らにとってどのようなインパクトがあったのか。「帝国ホテルには守るべき財産がたくさんあります。けれど、一方で企業として成長し続けなければならない。そこでは、攻めの姿勢も求められます。今回の案件は、まさにその表れです。企業人として有意義な経験になりましたね」と石川は振り返る。また、関戸は「困難なことは次から次に訪れます。けれどそれにも勝るチャンスがこのマーケットにはあふれている。営業以外の仕事も担っているため、重大な責任がありますが、当社で頑張っているスタッフのサービスをひとりでも多くの方に伝えていきたいです。実際にご宿泊いただければ、きっと、体験したことのない感動をご提供できるはずなので」と語る。「今回、帝国ホテルの魅力や課題を改めて見つめ直すいい機会になりました。帝国ホテルというメイド・イン・ジャパンのホテルの魅力を海外の人々に知らせることが私の仕事ですが、海外を知り、自らを知り、どちらに対しても理解を深めることがもっとも大切なことだと思います」と伊藤。
営業所開設から数ヶ月。慌ただしい立ち上げ期を経て、これからその拠点を設置した効果が少しずつ表れてくるだろう。もちろん、そこには課題や問題も出てくるはずだ。トライ&エラー。だが、それぞれの職場にいながら、彼らは同じ方向を向いている。「日本の『帝国ホテル』を、アジアの『Imperial Hotel』として浸透させる。さらに、利用していただく入口を広げる」。簡単なことではないだろう。しかし、これまで培ってきた帝国ホテルの歴史と同じように、革新に挑む精神によって、明日へ向けた新たな1ページが刻まれるに違いない。

Imperial Hotel CM


※所属部署は取材当時のものです。