「シュトレン」はクリスマスの伝統菓子。帝国ホテルでは熟練のパン職人が作っています
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シュトレンは、ドイツ生まれの伝統的なクリスマス菓子。毎年登場を心待ちにするファンも多い逸品です。今回は帝国ホテル 東京のベーカリー厨房に潜入。その主な製造工程とともに、シュトレンの魅力を帝国ホテルのベーカリーシェフ黒川英之がご案内します。
バター風味の生地とドライフルーツの味わいが日ごとになじむ焼菓子「シュトレン」
シュトレンは15世紀頃からドイツでつくられていた、と言い伝えられる焼菓子です。ドイツではクリスマス前の「アドベント」と呼ばれる4週間の間にシュトレンを薄くスライスして少しずつ食べる風習があります。時間が経つとともに生地とドライフルーツがなじみ、味の変化を感じられるのが日持ちするシュトレンならではの特徴です。帝国ホテルでは、ベーカリー部門のシェフが1980年代に修業先のドイツから持ち帰ったレシピをもとに、1997年頃からシュトレンづくりを行っています。
帝国ホテルのベーカリーシェフの黒川英之は「漬け込むフルーツの種類や生地の配合はその時々で微調整していますが、基本的な製法は変えておらず、伝統的な"ドレスデンスタイル"を貫いています」と語ります。
ドライフルーツ5種とナッツ2種を生地に練り込み生まれる贅沢な味わい
帝国ホテルのシュトレンは、レーズン、サルタナレーズン、オレンジピール、シトロンピール、ドライイチジクの5種類が贅沢に使われています。帝国ホテル 東京のベーカリー厨房では、これらのドライフルーツを例年8月の終わりから2か月ほどラム酒とブランデーに漬け込みます。
そして10月下旬からはドライフルーツとナッツを生地に練り込み、その中心にマジパン※を詰め、型に入れてオーブンで焼く作業を毎日繰り返します。黒川いわく、「帝国ホテルのシュトレン生地は、強力粉を多めに配合した柔らかい食感が持ち味。シュトレンは型を使わずに直焼きする製法もありますが、型に入れたほうが柔らかく仕上がります」とのこと。実際に味わうと、生地の食感は中央のマジパンと一体感を感じられる程しっとり柔らか。その理由は、生地自体にも少量のマジパンが練り込まれているためです。
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※マジパン:アーモンドプードルと砂糖を練ったもの
粉砂糖をまぶして総仕上げ。神聖な日を迎えるにふさわしい焼き菓子の完成
ベーカリー厨房のオーブンで50-60分かけて焼いた生地は、澄ましバター※にくぐらせ、最後にたっぷりと粉砂糖をまぶして仕上げます。この仕上げの工程によって、保存性がぐっと高まります。
黒川は「シュトレンは、ヨーロッパのキリスト教文化が深く関係している焼菓子」と結びます。
「例えば真っ白な粉砂糖を纏ったシュトレンの独特の形は、幼いキリストが白いおくるみに包まれている姿を模したもの。また、クリスマスの前に2~3㎝にスライスしながら、少しずつシュトレンを食べるという習慣自体も、イエス・キリストの誕生を心待ちにするという、キリスト教の精神と結びついた行為といわれているそうです」本場の伝統文化に想いを馳せつつ、日ごとに深まる味わいをどうぞお楽しみください。
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※澄ましバター:溶かしたバターの上澄みを取り除いたもの
Profile
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黒川 英之 帝国ホテル 東京 調理部 ベーカリー課課長
1995年帝国ホテル入社。2005年〜2006年に上高地帝国ホテルでベーカリー責任者を務め、2014年に現職に就任。毎年10〜12月は1日180個のシュトレンづくりを指揮している。
撮影/升谷玲子[商品](studio Bloom Room)、松川真介[取材]
スタイリング/渡辺陽子
編集/小松めぐみ
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※商品内容は取材当時のものです。最新情報はオンラインショップまたはホームページをご確認ください。