杉本料理長が語る SDGsへの想い[帝国ホテルの美味通信 by 家庭画報]
「帝国ホテルの美味通信」
THE IMPERIAL CUISINE PREMIUM JOURNAL
取材・編集 by家庭画報
撮影/ 角田進 取材・文/ 露木朋子
ありのままの恵みを最大限に生かしたい
「我々のSDGsの取り組みとして、表立って一番わかりやすいのは8月1日から再開した『インペリアルバイキング サール』においてでしょうか。オーダーバイキングを取り入れてフードロスを出さないシステムにしたり、環境に配慮した養殖魚を積極的に使うようにしたりしました。しかし、これは取り組みのほんの一部に過ぎないんです」。
思えばフランス在住時代に環境問題に対する意識が芽生えたのかもしれない、と語る杉本料理長。当時はパリでCOPの会議が開催され、車の排ガス問題も大きな論議を呼んでいた頃でした。そしてもうひとつ、この春の自粛期間中に思いがけず時間ができたことも、SDGsについてじっくり考えるいい機会となりました。
「レストランに行けない、ホテルに行けない。今まで当たり前にできていたことが当たり前ではなくなった日々。食材やエネルギーだって、この先も以前と同じである保証はまったくありません。だとしたら自分たちに何ができるのか。自粛期間が明けて、再びお客さまをお迎えするときにコロナ禍前と同じではいけない、そう強く思ったのです」。
杉本 雄(すぎもと・ゆう)
1980年生まれ。1999年に帝国ホテル入社後、渡仏。ヤニック・アレノ、アラン・デュカスなど世界的な料理人のもとでシェフを務めた。帰国後、2017年帝国ホテルに再入社、2019年帝国ホテル東京第14代料理長に就任。
フランス料理や鉄板焼きなどのレストラン、宴会料理、テイクアウトなど「帝国ホテル」の中にある飲食は多岐にわたります。その全体を俯瞰してSDGs、環境問題という観点から何ができるのかを探り、形を作り上げるのが杉本料理長に課せられたミッションのひとつ。各セクションのスタッフとコミュニケーションを重ね、ベーカリーの余ったパン生地の活用(※1)や、「チーフにもなるエコバッグ」プレゼントの立案など、新しい試みが次々に実を結んでいます。
「フランスで料理を通して学んだ、“ありのままの恵みを最大限に活用する”こと。身に染み込んだその学びを幅広く生かせていければ…。美しい環境なくして、美しいホテルは存在できないのですから」。
※1 さまざまな種類のパンの、レシピ上出てしまう余った生地をまとめて新たなパンを生み出している。