SDGsの想いが息づく「レ セゾン」冬の美味[帝国ホテルの美味通信 by 家庭画報]

ヴォワザンシェフの冬のスペシャリテ

トリュフやトランペット茸など香りあふれる森のきのこ、そして雷鳥をはじめとしたジビエ類。フランス人シェフ、ティエリー・ヴォワザン氏が腕を振るうレストラン「レ セゾン」では、今年の冬も旬のトリュフを軸にしたエレガントなコースが登場し、皆様にフランス料理らしい華やかな食材をお楽しみいただきました。

大ぶりの帆立貝の表面だけをさっと焼いた「帆立貝のポワレ ハーブを香らせた貝のソース インカのめざめのエクラゼ」。貝類のジュを主役にしたソースやインカのめざめのロティとともに。

 

 

 「帆立貝のポワレ ハーブを香らせた貝のソース インカのめざめのエクラゼ」を始め、心浮き立つ一皿ばかりですが、雷鳥を使った一品「雷鳥のインペリアル風」は、例年とりわけ人気の高い、ヴォワザンシェフの冬のスペシャリテのひとつ。

和栗のグラッセ、赤キャベツと赤玉ねぎのフランボワーズビネガー風味、トランペット茸のバターソテーと、森をイメージさせる食材が共演する「雷鳥のインペリアル風」。歯ごたえのあるトランペット茸のソテーが、しっとりと仕上げた雷鳥の柔らかな風味を一際引き立てる。

 

ヴォワザンシェフのSDGs

「ヨーロッパの貴族たちがジビエを狩りに森に入ると、そこにはいろいろな種類のきのこも生えている。ジビエときのこは昔からある伝統の組み合わせなのです。そしてそのジビエはもちろん余すところなく、料理に使います。雷鳥を例にとると、肉はもちろん、アタマやガラは出汁に使うから、料理に使用しないのは羽根くらいでしょうか。いろいろな面から見て、フランス料理の世界では、SDGsの考え方がごく自然に根付いていたように思います」(ヴォワザンシェフ)。

 もともと「レ セゾン」の厨房では、魚の骨や内臓、野菜の皮や切りくずなども工夫してソースやフォンに活用。ヴォワザンシェフとともに働く料理人は“捨てないこと”を徹底的に教えられるといいます。「何で皮を捨てちゃうんでしょう、そこに一番風味があるのに。魚や肉の見た目を良くするだけのために、切って形をととのえるのも、実にもったいないこと。皆さんが思っているほど、私は料理のビジュアルにこだわってはいません。とにかくすべてにおいて優先されるべきものは“味”、大切なのは“味”なんです」。言葉の端々から、ヴォワザンシェフの力強い思いが伝わってきます。

旬を迎えたセップ茸、ジロール茸、トランペット茸が蠱惑(こわく)的な香りを放つ。ティエリー・ヴォワザンシェフも思わず笑顔に。

 

コースの締めくくりは、繊細なデセール「モンブラン」

 冬の大地の恵みがぎゅっと詰まったコースの最後を飾るのは、「モンブラン 軽やかに願いを込めて」。ほっくりした栗を主役に、濃厚なマロンクリーム、やさしい味わいのマロンアイスクリームにマロングラッセと、多彩な栗の風味を重ねた美しいデセールです。ふわりと広がる甘やかな香りのラム酒のソースも格別。ラグジュアリーなディナーのフィナーレにふさわしい大人の味わいを満喫できます。

シックなトーンでまとめられたデセール「モンブラン 軽やかに願いを込めて」。栗はフランス産を使用。栗の魅力を最大限に味わえる一皿だ。

 

 

美味しさとSDGs

 実はこの一皿にも、帝国ホテルスタイルのSDGsの想いが息づいています。「食材は尊く、おいしいもの。こんなにおいしいのに商品にならない部分もあるなんて……という葛藤は常にありました」とパティシェールの齋藤有希さん。しかし、ペストリースーシェフとなり、ヴォワザンシェフと厨房に立つうちに、枠にとらわれず柔軟に考えられるようになったのだとか。

ペストリースーシェフの齋藤有希さん。

 

 

「ヴォワザンシェフは、とにかく食材のすべてを使いきり、“捨てない”シェフなんです。私の仕事の場合、熟しすぎたものや、なかには形がくずれてしまった果物は、ソースにしたり、リキュールに漬けて例えばソルベに加工して、その一皿にさらに美味しさを加えることができる。このような工夫は手間が増えることもあります。でも果実のデザートにあわせてその果実で作ったソースは当然マッチングもよいので、おいしさのためにも積極的に取り組んでいるのです。また、ホテルならではの利点を生かして、他のレストランとも連携していのちの恵みである食材に無駄のないメニュー提案もできるようになりました」。モンブランの土台であるメレンゲはセルクルで丸い形に抜いて使用していますが、抜いて残ったメレンゲはアイスクリームのトッピングなどに。チョコレートも、ホテル内のさまざまなレストランで、さまざまな形で生かされています。「SDGsというワードをきっかけにフェアトレードの食材も気になり、まずはチョコレートからトライしてみました。新しいものを発見できる、新しい味に出合えるというのは、とてもワクワクします」。

「帝国ホテルの美味通信」にて家庭画報の取材・編集による、レストラン・バーラウンジで注目のとっておきの情報をお届けいたします。

「帝国ホテルの美味通信」
THE IMPERIAL CUISINE PREMIUM JOURNAL

取材・編集 by家庭画報
撮影/ 西山航(世界文化社) 取材・文/ 露木朋子