杉本料理長のさんせりて~Sincérité~で新たな美食との出会いを[帝国ホテルの美味通信 by 家庭画報]

 10月13、14日の2日間、帝国ホテル 東京料理長 杉本 雄氏による特別なディナーコースがペアリングとともに楽しめるイベント 「“Dîner de la Sincérité”~杉本 雄の“さんせりて”~」が開催されました。

 帝国ホテルの料理長が一期一会を大切に催すイベントは、1978年に第11代料理長・村上信夫氏が始め、田中健一郎前料理長、そして杉本料理長へと受け継がれたものです。そのイベントを、杉本料理長はフランス語で「誠実」を意味する“Sincérité(サンセリテ)”と命名。料理にも、お客様にも、そして自身の料理に対しても誠実でありたい……そんな想いが込められています。

今回の目玉は、佐賀県伊万里市と杉本料理長のコラボレーション。

 会場の鉄板焼「嘉門」に入るとまず出迎えてくれたのは、色鮮やかな伊万里焼の数々。今回は、ご縁があって実現したという佐賀県伊万里市とのコラボレーションイベントで、杉本料理長が選んだ畑萬陶苑のお皿や壺、香水瓶など希少な約20点が「嘉門」店内に飾られ、いつも以上に華やかな雰囲気に胸が高鳴ります。

*畑萬陶苑 1926年、門外不出の技法を誇り「秘窯の里」とも呼ばれる伊万里市大川内山に創業。色鍋島の伝統を継承しつつ独自の技術・技法を探求し続ける窯元。

鍋島文様古伊万里婦人像。青色で下絵を、赤色、黄色、緑色で上絵付けを施した、色鍋島という伝統的な技法で作られた作品。

 

キュイールデザイン月下美人壺。“キュイール”とは革の意味で、壺の上から下に流れる黒い曲線には、皮革のシボのような質感と光沢を表現した畑萬陶苑の独自の技法が施されている。

 

松竹梅狗筥(いぬばこ)。顔は幼児に似せ、身体は伏せた犬の姿で、男犬・女犬を一対とした人形。安産祈願や厄除けとして飾られる。

 

左から青海波牡丹香水瓶、牡丹唐花香水瓶、桜文角香水瓶。

 

皿の底に高い台のついた、鍋島焼の代表的な形状である高台皿。左・青海墨弾き三瓢文高台皿。右・染付桃文高台皿。

 

 

わくわく感のあるおもてなし

 席につくと、料理長から本日のお品書きが書かれた巻物が手渡されます。タイトルは平仮名で「さんせりて」に。メニューもサインも同じく平仮名で記され、早速杉本料理長の遊び心が感じられます。

 お客様一組に一人のシェフがつき、いよいよ鉄板の前へ。各テーブルの鉄板から上がる、ジュッという音が「さんせりて」スタートの合図です!

一品目は、ほうれん草入りの皮で包まれた海老のラビオリ。海老を余すところなく使った一皿で、海老の身はラビオリの中の具に、足は揚げものに。殻はオイルを取り海老マヨネーズにし、オイルを取った殻は粉砕して海老風味のパウダーとしてクレソンの上に散らして。本日のコースは、それぞれの料理から杉本料理長が力を入れるSDGsの取り組みも感じることができます。

 

「鴨節/ふぉわ・ぐら/新(にい)高(たか)梨」。シャラン産鴨を一羽全て使った一品。鴨の足の八丁味噌煮込みの上にのるのは、柔らかな大根ととろけるフォワグラ。日本酒でマリネした佐賀県産の新高梨が爽やかさをプラスする。散らされた鴨節(鴨胸肉をペーストし、薄く焼き上げたもの)は追い鰹のイメージで作られ、鴨の骨や筋から取った出汁を掛けるとうまみが増す。

 

 

料理は全7品、ペアリング6種の特別なフルコース。ご注目は、お皿・食材・料理・お酒、全てに佐賀のものを使った、今回のイベントを象徴する「河豚/さふらん/緑おりーぶ」です。

伊万里焼のお皿は、杉本料理長が選んだもの。「繊細な色合いのお皿はフランス料理に使うのは難しいのですが、このような機会をいただいたので、ぜひ使わせていただきたい」と杉本料理長。

「このイベントでなければ使うことはなかった」とシェフたちが口を揃えるほど新鮮な佐賀県伊万里市のトラフグは、昆布締めにした後、バターの泡の中で泳がせてムニエルに。フルーティーでバランスの良い佐賀県産 富久千代酒造の「鍋島 特別純米酒」を合わせて味わいます。

お刺身で食べられるほど新鮮なトラフグを骨付きのままロースト。絶妙な火入れで、ぷりっとした食感が楽しめる。合わせるのは、豚足とフグ(河豚)の皮のゼラチン質を合わせたソース。山のブタ=豚足、海のブタ=河豚を一皿に閉じ込める杉本料理長の遊び心が光る。黄色いサフランのソースが水色の伊万里焼に映えて一際美しい。

 

 

客席を舞う杉本料理長

 一人のシェフが一組のまるでプライベートシェフのようにお客様の前に立ち、眼前の鉄板で仕上げた料理を提供する特別な時間。杉本料理長は各テーブルを回り、料理の仕上げをし、お客様との会話を楽しんだり、記念写真を撮ったり、料理の盛り付けをしたり……会場全体を盛り上げ、お客様の笑顔もさらに広がります。

「甘鯛/もって菊/白人参」。甘鯛の鱗はパリパリに、身はしっとりと。添えられているのは甘い香りの白人参のピュレ、根菜の皮で作ったコクのある渋味深いソース、そして甘鯛の骨と貝のジュースで取った出汁のエスプーマ。

 

 

伊万里牛と豪華すぎる脇役

 メインは、伊万里の雄大な自然の中で育った伊万里牛。外は香ばしく、中は鮮やかなピンク色のミディアムレアに焼き上げられ、噛むと口いっぱいに上質な甘みが広がります。

 鉄板で焼かれたごはんをベッド代わりに、焼き上がった伊万里牛を休ませ、肉の旨味がしっかりしみ込んだ焼きおにぎりが本日の締めの一品。さらに伊万里牛、うに、キャビアをのせ、鰹出汁を掛けてスペシャルに。なんとキャビアは一人に一瓶!杉本料理長の言う“追いキャビア”で贅沢にいただきます。

「伊万里牛/きゃびあ/夢しずく」。

 

合わせたのは料理長がこだわって選んだ、自然農法で作られたブルゴーニュ産の赤ワイン「エシェゾー2015」。

 

鰹出汁が全体を軽やかにし、満腹でもお茶漬けのようにサラッといただける。お米は佐賀県伊万里市産の献上米「夢しずく」。

 

ひと味もふた味も楽しいデザート

 デザートのスフレは、お客様の目の前で作って提供します。「通常オーブンで焼き上げるスフレを鉄板焼で作るのは初めての試み。ふくれるスフレは見て楽しい、食べて満足、両方を楽しんでほしい」と杉本料理長。

「抹茶てりーぬ/西洋松露/和栗」。

「酒粕すふれ/玄米ぷらりね/黒無花果」。

外はフワフワ、中から洋梨がとろけ出るスフレは、目の前の鉄板で作られた出来たてだからこそ味わえるもの。

 

お客様と創り上げる美食の祭典

 料理、お酒、食器、空間、パフォーマンス、おもてなし……一つ一つ、細部までこだわり抜かれた「さんせりて」。目の前の鉄板を舞台に次々と繰り広げられるのは、杉本料理長を筆頭に、シェフたちの飽くなきチャレンジ精神と遊び心が詰まった新しい表現方法の数々。

 終わってみると、フルコースを味わったというより、新しい食のエンターテインメントを体験した充実感に満ち溢れています。

 お客様はそれぞれのペースでお食事や会話を楽しみ、他のテーブルと交わることはありません。でも、レストランの中はまるでお祭りのような一体感があるのです、それは、杉本料理長と、“サンセリテ”な杉本料理長に敬意を表し、その期待に応えようとするシェフたちの団結力、そしてこのイベントを楽しみたいと集まったお客様が作り上げているものなのでしょう。新しい美食と出会える杉本料理長のサンセリテ。ぜひゲストの一人としてここでしかできない体験を味わってみてはいかがでしょうか。次の開催場所や日時が決まり次第、美味通信でもお知らせいたします。

伊万里焼のデミタスコーヒー椀を、今日の思い出とともにお土産に。

 

「さんせりて」を作り上げたスタッフ。杉本料理長(中央左)と、杉本料理長が全幅の信頼を寄せる「嘉門」の紀野シェフ(中央右)を囲んで。

 

 

「帝国ホテルの美味通信」にて家庭画報の取材・編集による、レストラン・バーラウンジで注目のとっておきの情報をお届けいたします。

「帝国ホテルの美味通信」
THE IMPERIAL CUISINE PREMIUM JOURNAL

取材・編集 by家庭画報
撮影/ 西山航 取材・文/ 露木朋子